【連載】もと女性自衛官アヤベの「ここだけの話」その1~草食隊員攻略法~

※本記事は過去記事の内容を基に校正しています

みなさん、自衛官っていうと、どんなイメージを持っていますか? 生真面目で精悍で屈強で…と思っている人は多いのではないでしょうか? そりゃあもちろん、任された仕事はしっかりやります! だけど、ホントはみんな、普通の男女たちなのです。

ちょっぴりズレてるとこもある、ちょっぴりオトボケなとこもある。そんな楽しい日常のあれこれ、こっそりお届けしちゃいます。

「自衛隊に入れば、どんな女の子でも彼氏ができる」兄の友人からそう聞いたKちゃんは、高校卒業後、柔道で鍛えた厚い胸板を膨らませて陸上自衛隊に入隊しました。大学や実業団からのスカウトもあったのですが、「これ以上柔道をやっていたら、一生結婚できないかもしれない」と、本気で不安になっていた彼女は、自分に自信を失っていたのです。入隊後、柔道経験があることすら隠していました。

 

……が。

聞いていたように、同期の女性隊員はどんどん彼氏ができていきます。あっという間に結婚する子、二股三股をかけている派手な子がいるなかで、Kちゃんには、2年たっても一向に彼氏ができる気配がありません。
アンパンマンのバタ子さんにそっくりな同期が結婚したのを聞いて、Kちゃんの焦りはピークに!

自衛官の男性といっても、世間の人が思っているほど肉食系ではないんです。
男は、デリケートな生き物。柵に囲まれた中で男ばかりで生活していると、女性に対してどう接していいかわからなくなる。周囲の視線が気になって、積極的なアプローチがとれなくなる。
結果、女性隊員に対しては、遠巻きにしてモジモジ、ヒソヒソ……という、思春期の延長のような可愛らしい集団が自衛官なんです。「黙っていても、誰かが声をかけてくれるに違いない」と勘違いしていたKちゃんは、2年間、それに気がついていませんでした。

そんなKちゃんに唯一アタックしてきたのは、「後ろから見ると、ほっぺたが揺れているのがわかるくらいのデブ」な幹部(42歳独身)だけ。それも、他の女性隊員全てに声をかけては無視され続けているという、いわくつきの男性でした。

「バタ子が結婚したのに、わたしにはアイツしかいないというのは間違っているッ!」待ちの姿勢では始まらないとわかったKちゃんは、狩りに転向することにしました。

まずロックオンしたのは、会計班の同期隊員。しかし彼は、基地の近くにあるキャバクラ嬢に骨抜きにされていることが発覚。プロには太刀打ちできないと、さっさと方向転換して次に目をつけたのは、細身で優男系の先輩、H3曹。趣味は格闘ゲーム。

「ゲームをさせてくれ」と下宿に遊びに行くこと数度。下宿に連日押しかけるものの、女性にアタックされたことなど一度もない、奥手で鈍感なH3曹、本当にゲームしかしてくれません。ゲームでは互角に戦えるようになりましたが、目的はそれじゃない! 痺れを切らしたKちゃんは、H3曹の実家で猫を飼っていることを知り、それほど猫好きではないのを隠して「猫大好き! 猫に会いたい!」と、実家訪問を提案しました。

 

喜んだのはH3曹のご両親。ゲームばかりして女っ気のかけらも見せたことがないH3曹に、「息子はゲイなのだろう?」と訝しがっていたんです。「息子をよろしく」との言質をとったKちゃんは、H3曹には「外堀作戦」が効果的だと気がつきました。

「ゲーム仲間」から「ご両親公認でのお付き合い」に変わって半年後。
H3曹が日曜日に当直にあたったのを狙って、Kちゃんはひとりご両親の元へ向かい、「結婚させてください」と、本人不在のプロポーズ。翌日、当直を下番したH3曹に婚約を「事後報告」しました。

失いかけていた自信をようやく取り戻したKちゃんは、猛勉強して3曹に昇任したのち、念願の結婚。その後、H3曹によく似た華奢な女の子を授かって大喜び。同じ苦労はさせまいと、3歳からは柔道ではなくバレエを習わせ、お姫様のように育てています。
彼女の次なる目標は「20代のうちに家を建てる」ことなんだそうです。ちなみに、同期のバタ子さんは、二度目の結婚を果たしています。

自衛隊は基本的に18歳から応募、入隊できるため女の子との接し方を知らないまま過ごしてきた、照れ屋な男性隊員も少なくないんです。肉食女子のみなさん、「自衛官は手応えがない」と諦めないでくださいね。(もちろん、積極的な人もいますよ!)

※実話を元にしていますが、プライバシーに配慮した構成になっています。

イラスト:モノ

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綾部綾

長崎出身、名古屋市在住、元航空自衛官。
ライター&プランナー。
料理と宴会幹事が趣味で、サバゲでは主に弁当、炊事、打ち上げ等の後方支援を担当。

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