小ネタから裏話まで!「ジャンクハンター吉田のアクション映画再評価」~エディ・マーフィ編その3

エディ・マーフィーは『おかしな関係』の撮影終了直後、間髪入れずドン・シンプソンから引っ張られ(ハリウッドでは2作同時進行の撮影は禁止という契約が多い)、『ビバリーヒルズ・コップ』に参加するのですが、ほぼプリ・プロダクションは完了していたので、大半はエディ・マーフィー待ちの状態でした。

シンプソンはエディは根っからのコメディアンなのでハードなアクションを自身でこなすのが難しいことを承知の上で、ジャッジ・ラインホルド(ローズウッド刑事役)とジョン・アシュトン(タガート刑事部長役)の3人で射撃訓練を行います。
結果、エディはブローニング・ハイパワーを使っての射撃の腕が良かったようですが、基本的に銃を扱うのは好きじゃなかったとか。そこで劇中での会話シーンを増やすようマーティン・ブレスト監督とシンプソンへ訴えました。

製作に出資している側のエディだからこそ可能な荒ワザでしたが、それが功を奏して粋なセリフ回しへと繋がったわけです。

『ビバリーヒルズ・コップ』の冒頭は、日本企業の台頭により米国車産業が追い立てられて犯罪率も増加中なデトロイトでの麻薬取引現場を潜入捜査していたフォーリー刑事の活躍(!?)で、大型トラックが激走する派手なカーチェイスから始まります。一番予算を注ぎ込んだシーンらしいですが、確かに停車中の車へガンガンぶち当たり破壊の限りを尽くします。

このようないきなりクライマックスシーンみたいに始まるのは、プロデューサーのシンプソンとジェリー・ブラッカイマーの案だったそうで、「コミカルな刑事作品を撮るからには大したことない映画と思われないよう冒頭からアクセル全開で観客の心を掴みに行く」という、ブロックバスタームービーが得意だった2人のプロデューサーらしい手法。そういう意味も込めて、エディの役名を「アクセル・フォーリー」にしているのも面白いです。

個人的には、ボゴミル警部補役のロニー・コックスが出演していて、さらに続編にも登場し、同じ年に公開された『ロボコップ』では民営化されたデトロイト市警を裏で操るディック・ジョーンズ役で最高の悪役を演じていたところに注目。
デトロイト市警所属の刑事を演じたエディ・マーフィーが、ロサンゼルス市警の警部補を演じたロニー・コックスに目の敵にされ、『ロボコップ』はデトロイトが舞台になっており、主人公の名前がアレックス・マーフィー。
自称ロボコップ博士としては無理矢理すぎますが『ビバヒル』と『ロボコップ』を並べ、勝手に共通点があるもんだという脳内妄想が激化しており、こんなことを書いている自分自身が何をいっているんだか・・・つまり『ロボコップ』愛が深すぎてチンプンカンプンになっているだけです。すみません。

そして『ビバヒル』といえば、車のマフラーの中にバナナを突っ込んでエンストさせるシーンが有名です。これを読んでいる人の中でも真似したことがある人もいるでしょうか。筆者も当然ティーンエイジャー時代に邪魔な路上駐車している車へやってみました。当時はバカだったので(今もですが)器物破損とかも理解してなく、悪い奴にはお仕置きを・・・とばかりにパニッシャーとなってました。
で、バナナを突っ込んだ結果、意外に走るものなんですね。

また、劇中で一瞬しか映らないシーンですが、敵役メイトランドの屋敷の出入口付近にデロリアンが路上駐車されています。とても謎だったので以前パラマウント・ピクチャーズの関係者へ伺ったところ、「あれはユニバーサル・ピクチャーズが同時期に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を撮っていて、詳しい内容は不明だけどデロリアンを大きくフィーチャーするという話をドン・シンプソンが聞きつけ、遊び心で路上駐車で映り込ませたらしい。結果的にあちらの作品が先に上映されたけど」ということだそうです。

クライマックスはそのメイトランドの屋敷での激しい銃撃戦になりますが、そこはサイレントムービー全盛期に一世を風靡したコメディアン、ハロルド・ロイドの大きな邸宅を借りて撮影。ハロルドはエディが尊敬するコメディアンの1人でもあり、出資しているエディらしく、希望や要望も通せることからこちらの邸宅を借りて撮影することになりました。

このクライマックスの撮影の直前には、マーク・L・レスター監督がここで撮影しており、アーノルド・シュワルツェネッガーの『コマンドー』劇中クライマックスで登場するアリアスの屋敷として使われました。
『ビバヒル』クライマックス撮影では、『コマンドー』の銃撃戦が激しすぎたことから庭の修復作業にかなり時間を要したそうで、事前に想定していたほど敷地内は使われなかったそうです。それもあって室内での描写が多くカットインされたわけですね。

次回は2本の続編について触れてみようと思います。

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ジャンクハンター吉田

ジャンクハンター吉田
書籍『ゲームになった映画たち』シリーズ(三才ブックス、マイクロマガジン)の著者であり、ゲーム・映画のコラムニストとして活動するかたわら、体を張ったフリーのジャーナリストとして数々の無茶ぶりなオーダーもこなす。殉職したらロボコップ計画へ自分の身体をドナーとして全て提供するつもり。

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