【映画レビュー】たった5人で300人のドイツ軍に挑んだ男たちを描いた話題の超大作『フューリー』は劇場で見なければもったいない!

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さて、本編について触れていくと、本作品は、戦争映画の王道ともいえる要素が随所に見られます。

●素人同然の新兵の成長物語
●怖いけど頼れる上官と未熟な新兵の間に次第に芽生えてくる絆
●個性豊かな仲間達との絆
●化け物のように強い敵戦車vs量産型で戦力面で劣る主人公サイドの戦車
●少数vs多数の絶望的な戦い

こうした要素が「ありきたり」と否定的にとらえるか、「王道」だと肯定的にとらえるかで、作品の印象は変わるかと思いますが、筆者としては、「ぼくたちが見たい戦争映画を作ってくれた」という感想を持ちました。

FURY_サブ1イメージが重なるのが、『プライベートライアン』
統率力のあるリーダーと個性的だけど頼れる仲間達、そして戦闘経験のない新兵による、戦場を転戦しながらのロードムービー的な要素は、『フューリー』もよく似ています。
『プライベートライアン』が、ノルマンディ上陸作戦という、歴史的な戦いを冒頭で描いているのに対して、『フューリー』は、史実に残っているような大きな戦いは描いていません(ヨーロッパ戦線で日々繰り返された戦いの”ある1日”にスポットを当てている)。
その面で若干の物足りなさを感じるかもしれませんが、本作の監督であるデヴィッド・エアー氏が共同脚本として関わった『S.W.A.T』、脚本・製作として関わった『トレーニングデイ』、そして監督として関わった『エンド・オブ・ウォッチ』などからも分かるように、警察官や軍人の日常を切り取らせたら天下一品の映画クリエイターだけあり、リアリティーという面でしっかりと観客を飽きさせません。
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ちなみにTBSラジオ「たまむすび」内コーナー「アメリカ流れ者」で、映画評論家の町山智浩さんが、10月21日の回で「フューリー」について語られていましたが、デヴィッド・エアー監督は、戦車兵たちの濃密な空気感を出すために、出演者たちに殴り合いをさせていたとかww。
確かに作品を見ると、「生死をかけた戦いをくぐり抜けた戦友感」はあった気がします。
それにしても殴り合いとは、すごい演出ですw。

Wardaddy (Brad Pitt) with Norman (Logan Lerman) in Columbia Pictures' FURY.各キャラクターの造形に関しては、物語序盤だと、必ずしも共感できるようなナイスガイたちではなく、平和な時代に生まれ育った筆者的には、「それってどうなの?」と思うワイルド過ぎたり、リアリスト過ぎる部分もあるのですが、見ていくうちに「戦争」にうんざりしきってもなお、自身や仲間の命を守るためには戦い続けなくてはならない兵士たちなりの、サバイバル術なのかなぁと思えてきます。

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ちなみに心優しく、理性的な新兵のノーマン・エリソン(ローガン・ラーマン)の視点は、ある意味で平和な時代に生きる私たちの視点に置き換えが可能な気がしました。
ノーマンの視点で見ることで、「戦争」の無慈悲さ、不条理さ、不毛さが見えてきます。
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実際、監督のデヴィッド・エアー氏は、

「これはノルマンディー上陸作戦やバルジの戦いなど、アメリカ軍が参戦した有名なバトルを讃えるありふれた戦争映画とは違う。数年に渡り戦い抜いてきたアメリカ軍は当時、人員も底を尽きてきており、兵士達も疲弊しきっていた。第二次大戦は勝つか死ぬまで戦うか、さもなけなければ重傷を負って帰されるのかの戦争だった」

と語っています。
この言葉は、ヒトラー、ムッソリーニなどファシスト政権や日本の帝国主義を撃ち倒したという大義があった第二次大戦がアメリカでは「正しい戦争」と言われている風潮に対する、監督の「NO」の意思表明なのかもしれません。戦争に「正しい」も「悪い」もなく、ただただ悲惨で、一般の人々には傷しかの残さないという…。

物語を最後まで見ると、その思いはより強く感じました。
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実物の戦車を使った大迫力の戦車シーン

で、冒頭でも触れた戦車についてもう1度触れておきましょう。
まずは、主人公たち5人が載るM4A3 シャーマン。
Fury Tank in the Hayfield Battle in Columbia Pictures' FURY.撮影には3輛のM4 シャーマンが使われており、英・ボービントン戦車博物館にある大戦後期の76mm砲を搭載したもの、そして2輛目は、特殊なシーンを撮影するために改造されたもの(カメラやスタッフを乗せるためのセットが取り付けられた)、そして3輛目が劇中で戦車内部のシーンを撮影するためのもの。3輛目に関しては、監督がどんな角度からでも撮れるように、すべての壁面が脱着可能とのことです。戦車砲の発射、排莢の一連の動作を見せるために、制作陣はかなり力を入れたそうです。その辺は特に注目です。
ちなみに細かく見ていくと、マズルブレーキがある長砲身なのでM4A3E8(イージーエイト)かと思われます。
仮にイージーエイトなら、初期の陸上自衛隊でもは使われており(アメリカから提供された)、陸上自衛隊の土浦駐屯地・武器学校にも展示されています。

続いては、主人公達の前にまるで死神かのように現れるティーガーⅠ。
The Tiger Tank in Columbia Pictures' FURY.ちなみにティーガーⅠは、現存するのは世界にたった6輛のみ。そして、唯一走行可能なのが本作にも出てきた英・ボービントン戦車博物館が所有する131号車。
劇中の冒頭でも触れられていますが、このティーガーと比べると、M4A3シャーマンは性能面で明らかに劣っていました。もし、ティーガーⅠと戦うなら3~4輛以上で対処しないといけないくらいの能力差。ミリタリー好きの間では、火力&装甲、そしてその活躍でレジェンド級の戦車なワケです。
本作では、戦車にそれほど詳しくなくても、ティーガーⅠの恐ろしさはしっかり分かるような作りになっているので、ミリタリー的な知識がなくても取り残されたりはしませんので、ご安心下さい。戦車砲の発射音からして違います。

Boyd "Bible" Swan (Shia LaBeouf) in Columbia Pictures' FURY.

最後に作品を実際に見た立場から感想をまとめさせてもらうと、とっても見応えのある作品でした。終盤に疑問が残るシーンもありましたが、その辺は見た人があれこれと想像を巡らせ、語り合えるようにするための粋な演出なのかもしれません。極力説明的な描写は避け、役者の演技で人柄や心情をくみ取らせる演出なので、複数回見ることで、さまざまな「気づき」がある作品ではないでしょうか。
作り手や役者から、熱意と誠意を感じる1本でした。

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製作総指揮:ブラッド・ピット 脚本・監督:デヴィッド・エアー
出演:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル
配給:KADOKAWA
©Norman Licensing, LLC 2014
公式サイト:fury-movie.jp
公式Twitterhttps://twitter.com/fury_p
公式Facebookhttps://www.facebook.com/fury.jp

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横須賀 敦史

1978年生まれ。酒(ウィスキー&ラム)とプロレスとバカ映画をこよなく愛す中年男子。サバゲーでは、ついつい前に出たくなり、わりとソッコーでヒットされてしまうのであまり戦力にならない。記者歴は丸13年(2014年現在)で、撮影と執筆担当。取材に行くのが三度の飯と同じくらい好き。学生時代は戦場カメラマンになりたかったが、「サバゲーを撮る」という、とっても安全かつピースフルな形で夢を叶えた。

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