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【連載】今日から使えるミリタリー雑学講座~第13回 今だ現役! 世界のご長寿兵器~海軍編


投稿者:竹内 修

前々回の陸軍、前回の空軍に引き続いて、今回は海軍のご長寿兵器を紹介します。

第二次世界大戦が勃発した1930年代ごろまで、全世界的に艦艇の寿命は短く、例えば第一次世界大戦に参戦したイギリス海軍の戦艦「ドミニオン」は、わずか13年で現役生活を終えています。
「艦これ」で「英国生まれの帰国子女」でおなじみの、旧日本海軍の戦艦(巡洋戦艦)「金剛」は、1944年11月に33年の生涯を閉じました。

※帝国海軍戦艦「金剛」

実は「金剛」は本来であれば就役から20年をメドに退役しているはずでしたが、ロンドン軍縮条約で後継艦の建造ができなくなったため、当時としては異例のご長寿艦となったいきさつがあるのです。

第二次世界大戦後は造船技術の進歩などによって艦艇の寿命が延び、水上戦闘艦であれば艦齢(建造されてからの年数)30年程度が適正寿命と見なされるようになりましたが、1隻あたりの建造コストがどんどん高騰していることもあって、現在では適正寿命を超えても、なお運用され続けている艦艇は珍しくなくなっています。
また、財政難や技術的・政治的理由などから新型艦を導入できない国では、艦齢50年を超えた艦が使われています。

インド海軍の航空母艦「ヴィラート」もそんなフネの1つで、2015年の時点でその艦齢は62年に達しています。元々、イギリス海軍が第二次世界大戦中の1944年に建造を開始し、その後財政難から建造が一端中断され、戦後の1953年に就役したセントー級航空母艦「ハーミーズ」でした。

※イギリス海軍航空母艦「HMSハーミーズ」(画像はイギリス海軍のwebより)

「ハーミーズ」は本来なら1981年に退役する予定でしたが、その年に起こったフォークランド紛争で垂直離着陸能力を持つ戦闘攻撃機「ハリアー」の母艦として活躍し、それに注目したインドに(ハリアーと共に)導入され、インド海軍の「ヴィラート」として、第二の人生を送ることになりました。

※インド海軍航空母艦「ヴィラート」(画像はインド海軍のwebより)

インド海軍は2012年を目処に「ヴィラート」を退役させる予定でしたが、後継となる国産空母「ヴィクラント」の建造が遅れたことから、「ヴィクラント」が就役する2018年まで、現役に留まり続けることになります。

ヴィラートの艦齢62歳もかなりのものですが、世の中には上には上がいます。フィリピン海軍のフリゲート「ラジャ・フマボン」の艦齢は72年(!)に達しています。

※フィリピン海軍フリゲート艦「ラジャ・フマボン」(画像はフィリピン海軍のwebより)

「ラジャ・フマボン」は元々、第二次世界大戦中にアメリカが輸送船などを護衛するために大量建造したキャノン級護衛駆逐艦の「アザートン」。大戦末期の1945年5月にはドイツ海軍のUボートを撃沈するという戦果も上げています。
第二次世界大戦の終結により、正規の駆逐艦よりも性能の低いキャノン級護衛駆逐艦は退役を余儀なくされますが、スクラップにならなかった艦はイタリアや韓国などの同盟国に供与されました。
創設されたばかりの海上自衛隊にも「アザートン」と同型艦の「アミック」が供与を受け、「アザートン」は「はつひ」「アミック」は「あさひ」として、約20年間に渡って海上自衛隊で活躍しています。

※海上自衛隊のあさひ型護衛艦「あさひ」

「はつひ」と「あさひ」は1977年に海上自衛隊を退役してアメリカ海軍に返還されました。この時点で両艦の艦齢は33歳に達しており、退役しても不思議はなかったのですが、財政的に余裕はないものの、海軍力を強化したいと考えていたフィリピン海軍から白羽の矢を立てられ、「はつひ」は「ラジャ・フマボン」「あさひ」は「ドゥツ・シカツナ」として、フィリピン海軍で「第三の人生」を送ることになったのです。
「ラジャ・フマボン」と「ドゥツ・シカツナ」は1990年代初頭にフィリピンを襲った台風の被害を受けて一度退役を余儀なくされましたが、「ラジャ・フマボン」は姉妹というべき「ドゥツ・シカツナ」からパーツの移植を受けて復活し、現在に至っています。

「ラジャ・フマボン」のように第二次世界大戦中に就役して、現在も現役に留まり続けている例は他になく、そのレアさゆえに2007年には映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』の海戦シーンに、アメリカ海軍の艦艇役で出演を果たしています。

中国の海洋進出を受けてフィリピンは海軍力の強化に努めており、2011年にはアメリカ沿岸警備隊から「ラジャ・フマボン」の後継として大型のカッター(巡視艇)を導入しましたが、どういうわけか「ラジャ・フマボン」はフィリピン海軍旗艦の座こそ後継艦に譲ったものの現役に留まり続け、それどころか一時は対艦ミサイルを搭載することさえ検討されていました。
ちなみにフィリピン海軍には、今年3月に海上自衛隊を退役したヘリコプター搭載護衛艦「しらね」の譲渡を、日本に申し入れているという話もあります。「しらね」は戦時中に急造された「ラジャ・フマボン」に比べて船体が強固なため、もし譲渡されれば「ラジャ・フマボン」を超えるご長寿艦になる可能性があります。

水上戦闘艦に比べて潜水艦の適正寿命は若干短く、おおむね20年程度ですが、台湾海軍の潜水艦「海獅」の艦齢は71年。
「海獅」の前身はアメリカ海軍が第二次世界大戦中に建造したテンチ級潜水艦「カットラス」。「ラジャ・フマボン」のような戦果こそ上げてはいないものの、1945年8月には千島方面で哨戒任務を行っています。
「カットラス」は1977年にアメリカ海軍を退役し、1946年に就役したパラオ級潜水艦の「タスク」(台湾海軍では「海豹」)と共に台湾海軍に引き渡され、両艦とも現役に留まっています。

※台湾海軍潜水艦「海獅」(AFV CLUB製1/350スケールキット)

ただ、さすがに現在では深く潜航するのは危険なため、潜水艦本来の役目である哨戒ではなく、浅い海域で水上戦闘艦や航空機の、対潜水艦戦闘の相手役として使われているようです。
台湾海軍は何度もこの両艦の後継艦の導入を試みましたが中国への配慮から実現せず、「海獅」と「海豹」も退役のメドが立っていません。

ここまで来ると老人(老艦)虐待のようにも思えてしまうところですが、老いてなお働き場所があることは、冒頭で紹介した「ドミニオン」のように、まだ働けるにもかかわらず短い生涯を閉じてしまうよりも、軍艦としては幸せなのかもしれません。

※本記事は過去記事の内容を基に校正しています (2017.11)

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WRITER PROFILE

竹内 修

竹内 修

ライターから不動産シンクタンクを経て、ミリタリー業界に迷いこんできた
自称軍事評論家。サバゲーは長期休業中だが、運動不足解消を兼ねて...

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