【連載】今日から使えるミリタリー雑学講座~第1回 艦これに学ぶ艦船の命名規則


この船は第二次世界大戦を生き延びて1948年に解体されましたが、その艦名は戦後に建造されたヘリコプター護衛艦に継承されています。

イタリアだけでなく、アメリカ、イギリス、フランスといった、長い歴史を持つ国の海軍では、退役や戦没した艦艇の艦名を新たに建造した艦艇に継承させたケースが数多くあります。旧日本海軍は太平洋戦争の終結後に解体されましたが、その伝統を受け継いでいる海上自衛隊は、旧日本海軍の軍艦の名前を、新たに建造した護衛艦や潜水艦に継承させています。

4月11日に一般公開され、9,000名の定員に対して4万通を超える応募が殺到したことで話題となった、海上自衛隊のヘリコプター護衛艦「いずも」も、そんなフネの一つ。日露戦争で活躍した旧日本海軍の装甲巡洋艦「出雲」の名を受け継いでいます。
護衛艦「いずも」  出典:海上自衛隊公式Webより

旧日本海軍には艦艇の命名規則があり、
戦艦には「長門」のような旧国名
重巡洋艦には「愛宕」のような山岳名
軽巡洋艦には「那珂」のような河川名
空母には「飛龍」のような瑞祥動物(鳳、龍、鶴、鷹といった空を飛ぶ動物)、
一等駆逐艦には「雷」「吹雪」のような天象や気象、海洋、季節
二等駆逐艦には「松」「橘」のような植物名
が付けられていました。

なお、最初は戦艦や巡洋戦艦とて建造され、途中で空母に変更された「加賀」「赤城」は国名や山岳名のまま就役していますし、太平洋戦争の末期には「阿蘇」「天城」のように、最初から山岳名で建造された艦もあります。
「出雲」は巡洋艦でありながら、なぜ旧国名が付けられているのか疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

実のところ旧日本海軍の命名規則は明治の末年に制定されたもので、それ以前に就役した「出雲」をはじめとする艦艇の命名には、はっきりした規則はありませんでした。
海上自衛隊最大の護衛艦であり、事実上ヘリコプター空母でもある「いずも」には、当初「ながと」のような戦艦の名前や、「あかぎ」のような空母の名前が付けられるのではないかという噂がありました。

海上自衛隊にも命名規則があり、護衛艦には旧国名(地方の名称)、山岳、河川、天象、気象からその名を付けることになっています。
その規則に則れば「ながと」「あかぎ」もアリなのですが、実のところ旧海軍の戦艦や空母の艦名を受け継いだ護衛艦はそれほど多くありません。何ゆえかは定かではありませんが、戦艦や空母の艦名は歌舞伎役者や落語家の大名跡のようなもので、それにふさわしい能力を持つ護衛艦でなければ、おいそれと使えないのかもしれません。

「艦これ」に登場する、英国帰りの帰国子女でおなじみの「金剛」の艦名は、イージス護衛艦の「こんごう」に受け継がれていますが、「金剛」は元々、戦艦の攻撃力と巡洋艦の速力を併せ持つ巡洋戦艦として建造されたため、その艦名を使うにあたってのハードルは、純粋な戦艦より低かったのかもしれません。

護衛艦「こんごう」  出典:海上自衛隊公式Webより

ちなみに金剛四姉妹の艦名は、イージス護衛艦の「こんごう」「きりしま」、ヘリコプター搭載護衛艦の「ひえい」「はるな」が継承しています。この4隻はいずれも就役した時点では海上自衛隊のシンボルと位置づけられていたフネでしたから、太平洋戦争で最も活躍した戦艦である、金剛級の名を受け継ぐにふさわしいと考えられたのでしょう。

護衛艦「きりしま」


護衛艦「ひえい」

金剛型以外の戦艦では「日向」「伊勢」の艦名が、ヘリコプター搭載護衛艦の「ひゅうが」「いせ」に受け継がれています。これらは太平洋戦争の終盤に、後部の主砲を撤去して飛行甲板を設けた航空戦艦に生まれ変わっています。重武装と高い航空機の運用能力を持つ「いせ」「ひゅうが」は、その名を受け継ぐにふさわしいフネといえるでしょう。

護衛艦「いせ」  出典:海上自衛隊公式Webより

今のところ空母の名前を継承した護衛艦はありませんが、「蒼龍」「雲龍」の艦名は、そうりゅう型潜水艦の「そうりゅう」「うんりゅう」に継承されています。

潜水艦「そうりゅう」 出典:海上自衛隊公式Webより

海上自衛隊の潜水艦には「うずしお」のような海象か水中動物の名称が付けられる規則になっているので、架空の動物ですが「龍」はその規則を充たしています。「蒼龍」と共に活躍した「飛龍」も「龍」ではありますが、その名が示す通り水中動物ではないので、そうりゅう型潜水艦がその名を受け継ぐ可能性は高くないといえます。

巡洋艦や駆逐艦の艦名は戦艦や空母に比べて継承のハードルが低く、駆逐艦「電」の艦名は、1956年に就役したいかづち型護衛艦の2番艦と、現在も就役中のむらさめ型護衛艦の5番艦に「いなづま」として継承されています。
護衛艦「いなづま」  出典:海上自衛隊公式Webより

「艦これ」に登場する「電」は「戦争には勝ちたいけど命は助けたい」と語っていますが、この言葉は「電」が太平洋戦争のスラバヤ沖海戦で、撃沈したイギリス海軍の乗組員を救助したというエピソードを背景にしているようです。その気持ちが乗り移った・・・というわけではないのでしょうが、むらさめ型5番艦の「いなづま」は、2014年に海賊対処のために派遣された中東のアデン湾で、漂流していた小船を発見、75人の乗員を救助しています。

贔屓の艦娘が海上自衛隊の護衛艦としてどう「転生」したのかを調べてみると、ゲームをもっと楽しめる・・・かもしれません。

文/竹内修

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